design column no.5『兎と亀』

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去年の年末に娘の幼稚園の学芸会で「ウサギとカメ」の劇を見て思ったことを綴っていこうと思う。誰もが知っている有名な童話の一つである「ウサギとカメ」の話。内容はざっくり言うと、足の早いウサギと足の遅いカメが競争して結果的にはカメが勝利すると言う誰もが一度は耳にしたことがある話。結果的に足の遅いカメが勝利するのだが、確実に有利と思われたウサギが負けた理由は、足の遅いカメに油断した為、途中で昼寝をしてしまい、その間にコツコツと進み続けたカメに追い越された結果負けてしまった。というのが敗因になる。そこからの学びとして、「どんなに遅くてもコツコツがんばりましょう!」というのが一般的な学びではないかと思う。しかし途中でウサギがもし昼寝をせずに走り続けていたらもちろんウサギのほうが早くゴールしていたはず。もしウサギがカメに油断していなかったら、、、。

久しぶりに劇を見て、実はこの競争の本質は違うところにあるのではないかと感じた。それはウサギとカメの「見ている視点が違う点」がこの結果になってしまった一番の原因ではないかと思う。ウサギは「遅いカメを見て走り始めた」のに対して、カメはウサギではなく「ゴールだけを見て走り始めていた」のが決定的に違う点であり、カメが勝利した本当の意味の勝因なのではないかと思う。
とある元経営者が全く同じことを言っている記事を見つけた。会社の経営もこの「ウサギとカメ」と一緒であると言う内容だ。その内容は「ゴールは何かをしっかり見極め、競争相手に惑わされることなく、ゴールを見ることが重要性。」カメはゴールを見ていたから、歩みは遅いが、足の速いウサギに勝てた。「見ているところが違った」から、この結果が生まれたのであるという話だった。

もしかしたら、これは自分たち美容師にも言えることなのではないかと思う。日頃のトレーニング、スタイリストデビューの時期、売上、集客、SNSのフォロワー数、いいね数、コンテストの結果……。「見ているところ」は本当に正しいか、どうなのかということだと思う。
最終的なゴールを見ずに、自分以外の周りの人と比べてしまう。しかし、それがもたらすのは、カメに負けたウサギと同様の結果になってしまうのではないかと思う。そして、もっと大切なことがある。それは、「目指すゴールは果たしてちゃんとあるのか」ということ。ゴールが定められていないのに、いったい、どこに向かおうとしているのか。例えば、自分達美容師の最終的なゴールを考えると、「お客様に喜んでいただき、満足していただくこと」がゴールであると考えると、自ずと今本当にやらなければならないことが見えてくるのではないかと思う。
前回のコラムは「ベーシック再考」というテーマだったと思う。カットのトレーニングに限らず、今正にサロン教育をもう一度、時代に合わせて考え直さなければならない時だと思う。スタッフの中には器用なタイプ、仮に「ウサギタイプ」、不器用なタイプ「カメタイプ」に分けることができると思う。正直自分はウサギタイプであると思う。そこまで技術ができなくて苦しんだ経験がないからだ。今のスタッフの中でももちろん「ウサギ」と「カメ」が存在している。少し教えただけでサクサク技術を習得してどんどん先に進んでいけるタイプと、頭ではなんとなく理解しているが人の倍以上練習しないと手がなかなか動かないタイプ。それぞれが良い点、悪い点があるが自分が感じるのは、最終的には「カメ」が最強だと思う。

ここからはアシスタント時代の自分自身のことについて話していこうと思う。さっき話たように自分は「ウサギタイプ」であると思う。自分で言うのもなんだが、とりわけ技術ができない方ではなかったと思う。しかし、ただできるのとそれをコントロールできるとでは雲泥の差があるということをカットのトレーニングに入って痛感させられた。昔カットのトレーニングは全10スタイルを1スタイルずつ合格をもらっていくスタイルだった。それもただの合格ではなく、「完璧なテクニックの理解」と「完璧な課題のスタイル」をつくらなければ合格をもらえなかった。最初に「ワンレングス」のチェックを順調にもらい、次に「レイヤーボブ」のトレーニングに入っていった。結果から言うと、このスタイルを合格するために6ヶ月かかってしまった。今までなんとなくで進んできた技術トレーニングが逆に仇になってしまったのだ。完全に切り方をマスターする方に考えがいってしまっていて、トレーニングの最終的なゴールを見失っていたからである。完璧を目指さず、60点、70点くらいの合格ラインで満足してしまう癖が染み付いてしまった結果が、この6ヶ月かかってしまった大きな原因になってしまったのではないかと今は思う。ちなみに今は常に100点を狙っている。

話をもどして、自分が「カメ」が最強だと思うには理由がある。いわゆる不器用タイプの人は人の倍以上トレーニングしなければ、なかなか上達しない。進み具合でいうと遅いタイプである。しかし、このタイプの人が技術を習得したときが本当にすごいのである。ありとあらゆる失敗をして、そこから学んだ経験値が高いからである。成功したときの学びよりも失敗したときの学びのほうが大きく、そこからトライ・アンド・エラーを繰り返して学んでいくので、本当の意味での「一生の技術」を得ることができるからである。逆に器用な人はなんとなくできてしまう傾向があり、表面的な技術の習得で終わってしまうことが多いと感じる。ただ器用な分、手が覚えるのが早く技術の進みが早いのが良い点である。不器用な人はやはり進みが他の人よりも遅いのが最大のネックになってしまう。両方に良い点、悪い点があり、カメタイプの人は「忍耐力」「失敗をしてもめげない心の強さ」を器用な人は、一つのことを追求する「探究心」をもって日々のトレーニングに励んでいくと良いと思う。スタッフを育てる立場にある人もそれぞれの良い点、苦手な点を理解しておくことが大切ではないかと思う。

技術トレーニングの最終ゴール地点は「 お客様に喜んでいただき、満足していただくこと」そこをぶらさずにトレーニングのカリキュラムを考えるのが大事なのだと思う。最近の傾向として、いかに早くデビューさせて、売れるスタイリストを育てられるか。というのが課題だと思うが、地道に積み上げてきた技術こそが本当の意味での「一生の技術」になるのではないかと思う。今すぐ売れる薄っぺらい技術と一生使える本物の技術。
どちらが本当の意味でのゴールなのか答えは明白ではないでしょうか。
小林


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