design column no.1『デザインするということ』

design column no.1『デザインするということ』

デザインという言葉は世の中にたくさん溢れていて、実際に様々なデザインが私たちの身の回りに存在している。街を歩けば、まずは道路という車や人が安全に行き来することを考えて設計された道があり、会社やマンション、デパート、ホテルなどの建築物が立ち並ぶ。電車に乗れば、車両のデザインの違いはもちろんのこと、線によって異なるマークや、吊り革のかたちの違い、椅子の色や柄、形や素材の違いがある。また、家ではテレビをつければ映像というデザインが目に入ってくる。一方で、私たちの暮らしを豊かにする為のプロダクトデザインやインダストリアルデザインも様々であれば、五感を刺激し、心揺さぶる映像や音楽、アートも実に様々だ。いったいデザインとは何なのだろうか・・・?日常に密着したもの、暮らしやすさの追求、街をつくる大きな要素、感情を動かすもの、シンボリックな存在、メッセージや何かを知らせるもの、あるいは自己表現。考えれば考えるほどきりが無い。きっとその無限の可能性と自由さがデザインの魅力であり、醍醐味なのだろう。よくよく考えてみると、私たちが生活していく上で、周りにあるものは自然以外、全てデザインされていると言える。

それでは、私たち美容師にとって「ヘア」というデザインはどんな存在なのだろうか?私の中では大きく2つある。一つは「日常を過ごすヘアデザイン」。もう一つは「自分を表現するヘアデザイン」。日常を過ごすヘアデザインとは、主にサロンワークでつくるヘアデザインのことを言うのだが、ここではデザイン性はもちろんのこと、お客様が日常を過ごす上でのやりやすさや、再現性が重視される。また、それらを実現する為には、多くの力が必要とされる。技術力、センス、提案力、察知力、イメージ力、判断力、人間力、接客力・・・。どれをとっても「経験」が必要なのは言うまでもないが、それぞれが独立しているのではなく、全てが連動しているように思える。例えば、技術力を磨いていけば、こだわることの大切さを感じ、人間性にも変化が出てくる。また、察知力が身につけば、センスと提案力にも磨きがかかる。逆の場合も同じことが言えるのである。つまりどの力からつけていこうが、その他の力の必要性を感じるのだ。あとはそこに自分自身が気付けるかどうか。

技術には理論があり、原理がある。これをどのように学ぶかが大切で、その後の技術力に大きく関わってくる。もっと言えば、デザインを発展させていく力に関わるのだ。ここで絶対に忘れてはならないのは、私たちの仕事は自分の手と目だけが頼りのとても「アナログな仕事」だということ。テクニック本を見て学べること、動画で学べること、今は勉強するツールが色々とある。それらを有効に活用するのはとても大切なことだ。しかし、本当の意味で技術を自分のものにすることは難しい。なぜなら、本や動画という2次元で学べることには限界があるからだ。これは3次元であっても同様で、私の経験上はっきり言えば、「人から学べること」と「人に教えること」自体に限界があるからだ。その理由はシンプルで、私たちは自分の「手」で仕事をするからだ。理論を理解しても、手の感覚が洗練されていかなければ良いデザインはつくれない。私がよく口にする言葉があるのだが、

「手に感情を込めてこそ良いデザインがつくれる。」

ということだ。何を言っているんだという声が聞こえてきそうだが・・・。私はいつもカットする時、髪の毛と会話をする。どこに動きたいのか?どこに収まりたいのか?一番ハサミが気持ち良く入る場所を探して髪を引き出す。

そして、もう一つ「自分を表現するヘアデザイン」。いわゆるクリエイションだ。ここで必要なのは、オリジナリティ。クリエイションには正解というものはなく、自分がイメージしていること、表現したいことをどこまで具現化できるかがゴールである。また、そのゴールを決める時に、センスが問われるのである。ここで私が言っているゴール地点とは、テーマやイメージ、絵作り等はもちろん含まれるのだが、一番大切なのは最終的に「どんな人をつくりたいか」である。その時に重視しなければならないのは判断力だ。「つくりたい人、表現したい人」に対して、モデル、ヘアデザイン、メイク、ファッション、絵作り、表情etc・・・どこか一つでも判断が違えば、きっと何かしっくりこないところが出てくるだろう。私自身もそのような経験を数多くしてきて、今がある。自分の頭でイメージしていることをどこまでジャストに表現できるか、その経験と客観視がクリエイションの現場のみならず、美容師としてのスキルを上げることに繋がると思う。

表現することには様々なスイッチがある。このスイッチをどれだけ多く、そして細かく持つことが重要だ。ヘアスタイルを見せたいのか、イメージを見せたいのか、人を見せたいのか、世界観を見せたいのか、、、。これらもまたゴール地点を決める上でとても大切だ。いずれにせよ、自分を表現することで、視野が広がることに間違いない。こう考えるとやはり、「日常を過ごすデザイン」と「自分を表現するデザイン」は共通することが多いと強く思う。
D.D.A.では、常に「デザイン」を軸として、様々なスイッチで技術と理論とセンスを身につけていく内容で授業を行い、本当の意味で技術を自分のものにしていただくことを目的としています。そして何より大切にしているのは、「長く活躍できる力を身につける」ことです。今年も宜しくお願い致します!
古城


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